【感想】蜘蛛ですが、なにか?(著:馬場翁)
クラスメイト(先生含む)全員異世界転生。私はなぜか魔物のクモに!?
ざっくりあらすじ
『蜘蛛ですが、なにか?』は、女子高生だった『私』が、異世界の時空魔法の余波を受けて死亡し、異世界の『蜘蛛』として弱肉強食サバイバルに放り込まれる物語である。
そこには、威風堂々たる龍の姿があった。
やばい。蜘蛛としての本能、人としての理性、魂からの叫び、そのどれもが声を揃える。
感想1:ゲームプレイ日記的な読み味のテキスト
主な舞台となるダンジョンには様々な魔物が徘徊する他、魔物を討伐する人間の冒険者もいて、下等生物のクモとして生を受けてしまった『私』は散々なピンチに見舞われる。
その危機を脱するたびにゲーム的なスキルを習得し、力を徐々に身に着けていく――
というサバイバル模様が、この作品の大部分になる。
何かの事件が起きて、キャラクターたちが解決する、という物語は一巻の限りでは展開されない。
強敵に遭遇するたびに逃げるか隠れるか、もしくは持てるスキルを駆使して倒すか、という『私』の試行錯誤を楽しむ物語だ。
感想2:二人の視点から語られる『異世界』
『私』の前世は女子高生とされているが、あまり女子高生感はない。
ゲーマーで、家族関係は悪く、株をやっている。
計算能力が高く、ポジティブというか前向きというか、状況をあまり深刻に捉えない性格だ。
異世界に転生したのは、そんな『私』だけではない。
時空魔法に巻き込まれた教室の全員が異世界に転生している。
その中でも『私』と、王国の第四王子として生を受けたシュレイン・ザガン・アナレイト(前世名は山田俊輔)、二人の人物を視点として、異世界が語られる。
作中では『シュレインが生まれたのは、先代の勇者が死んだのと同時期』と触れられ、冒頭では『勇者と魔王が戦いを繰り広げてきた』と書かれている。
第一巻では物語らしい動きはなかったが、異世界ではなんらかの事変が起きているのではないかと窺わせる。
そのあたりのストーリーは、次巻以降に期待という感想だ。
まとめ
『蜘蛛ですが、なにか?』はファンタジー小説というよりはゲームプレイ日記的な楽しみがある小説だった。
挿絵で描かれるクモが可愛らしくて、せっせと魔物を噛んだり糸を振り回したりしてる図を想像すると、ちょっぴり微笑ましい。
そして「イヤッハー! ありがとう! いただきます!」。
でも体の大きさは人と同じくらいというのが、……ガクブル。
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