らのつづり。

ライトノベルを中心に、読んだ本の感想など。

【感想】コップクラフト DRAGNET MIRAGE RELOADED(著: 賀東招二 絵:村田蓮爾)

元軍人の警官と異世界人の少女が奔走する社会派ファンタジードラマ!

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あらすじ

コップクラフト』は、異世界のゲートが開いた都市にて誘拐された妖精を救出するために、刑事ケイ・マトバと少女騎士ティラナ・エクセディリカが合同捜査する物語である。

 

「いろいろ複雑なんだ」

 どうにかこうにか、マトバは言った。

「万民を助け、悪しきをくじく。それで済んだ時代もあったんだろうがね。いまは……まあ、えらく複雑なんだよ」

「わたしには分からない」

「みんなそうさ」

 

ふたつの異世界文化が融合する都市で繰り広げられるバディストーリー!

 舞台は地球。

 大勢の移民が流入して治安が悪化した都市、サンテレサ市。

 この『移民』というのが、なんと異世界。地球の科学や文化と全く異なるファンタジーな、魔術だったり妖精だったりが存在する世界からの来訪者なのです。

 

 主人公のケイ・マトバはサンテレサ市警察の特別風紀課に所属する刑事。相棒とともに妖精の人身売買を捜査していました。

 その売人を逮捕しようとしたところ、突如として凶暴に。相棒を殺害した上、銃弾を浴びても絶命することなく、妖精を奪って逃走してしまいます。

 

 必ず足取りを掴んで仇を討つと誓うケイ。

 ところが次の日に上司から与えられた命令は、ゲートから訪れる異世界の貴族を迎えるというもの。

 不満を抱きつつも従うケイは、そこで妖精救出を使命とする少女騎士ティラナ・エクセディリカと出会うのでした。

 

 バディモノにお決まりの、でこぼこコンビによる捜査。

 やがて事件は現代社会と魔術が絡むテロリズムに発展していきます。

 

清濁併せ呑むケイと正義感の強いティラナの衝突と和解!

 潜入工作もこなす刑事ケイは、サンテレサ市の混沌とした裏社会にも協力者を持っています。蛇の道は蛇。捜査として情報屋を頼りにしますが――

 

 一方のティラナは、誇り高い騎士です。

 悪事を働く売人を見過ごすことなどできません。法律も風習も異なる来訪者は、ケイと幾度となく衝突します。

 

 でも、ふたりにはある共通点があります。事件解決へのモチベーションです。

 ケイは現代警察の知識と、過去の軍属の経験を活かし。ティラナは異世界魔術の知識を活かし。

 手がかりから手がかりを掴んで真相へと迫っていくふたりは、徐々に互いへの信頼と敬意を深めていきます。

 

 この過程がですね! とても微笑ましくてですね!

 

 ケイの意外な同居人(ネコ)や壮絶な過去だったり、自称27歳さんなティラナのお茶目だったりが、人物の魅力を深めてくれています。

 でこぼこコンビ好きな私は読みながらつい、ふたりが距離を縮めていく様子ににやついてしまいました。

 

 真面目な話、社会的なテーマにもちらりと触れられています。ちらりと。

 初版は2009年となっていましたが、このお話は現代(2019)でも問題視されている事柄に触れています。

 恐らくは未来になってもあちこちで起きる衝突なのでしょう。

 

 もちろん、こちらはフィクション

 ケイは地球人と異世界人、両者の思想恐怖を理解しながら、事件に対してアクションを起こしていく。そういうお話でした。

 

まとめ

コップクラフト』は王道刑事ドラマにして、良質なファンタジーであり、それでいて現実の社会問題も扱っている物語でした。

 作者後書きも含めて、陰鬱になりすぎない、明るい展望を持てる終わらせ方でとてもほっとしました。

 

 いやはや、結構、あっさりと残酷な描写も多いので、そういう意味でもちょっとオトナ向けなお話かな、と私は感じたり。

 裏社会とオカルトが融合した怪しげな雰囲気や、細かく描写されている異世界魔術や風習などがお好きな方にもオススメできる作品ですね!

 

補足:2019年夏、アニメ化しました。