【感想】りゅうおうのおしごと!3(著:白鳥士郎)
迫る年齢制限。立ち塞がる壁。万感の想いを込めたそれぞれの『突破』
2巻感想はこちらから
ざっくりあらすじ
『りゅうおうのおしごと!3』は、竜王『九頭竜八一』がプロデビュー戦で惨敗を喫した相手との再戦に苦しみ、今までとは違う戦い方を身に着けようとする。一方、八一の師匠の娘でもうすぐ二十六歳を迎える『清滝桂香』は自分の限界に悩まされる、という物語だ。
「……将棋星人が棲む星はすごく遠くて、その星の空気は地球人にとって毒。行けばきっと、死んでしまう。でも――」
感想1.前巻までとは打って変わり、『大人』と『凡人』が主役の物語
女流棋士になるために研修会に所属できるのは二十七歳までだという。
そして八一や銀子、あいちゃんたちのよきお姉さんである清滝桂香(きよたきけいか)はもうすぐ二十六歳。負け続きのスランプ。周囲の友人たちはみな仕事や家庭を持っている。そんな状況で、余裕を失ってしまう。
自分には才能がない。それでも夢を追いたい。
この巻は、そんな桂香さんの葛藤と迷走を描いている。
もう一人の主役は、生石充(おいしみつる)玉将の娘、飛鳥ちゃんだ。
飛鳥ちゃんは将棋を打ちたいと父親に訴えるが、生石からは「お前には才能がないからやめろ」と言われてしまう。
これには父親なりの優しさもあり、棋士を目指すということは、同じように目指す他人を蹴落とすこと。優しい性格の飛鳥ちゃんには酷すぎるという考えがあった。
それでも飛鳥ちゃんにはまだ『将棋を打てるようになりたい』という想いが残っていて、八一に教えてくれと頼み込むのだった。
二人の主役を軸に描かれる葛藤に、思わず潤んでしまった。今のところ、一番好きな巻である。
感想2.八一竜王、惨敗のトラウマに立ち向かう
今回、八一は因縁のある相手と対戦することになる。天才と持て囃されて迎えたプロデビュー戦で惨敗を喫した山刀伐尽(なたぎりじん)八段だ。
自分の戦術『居飛車』を研究し尽くされていると痛感した八一は、『振り飛車党』生石に一時の弟子入りをすることになる。
生石は山刀伐のことを『才能はプロでも最底辺レベル』と評す。と同時に、『あいつを見てると、まるで自分が努力してこなかったように思える』とも言う。
将棋界に君臨する『名人』の研究パートナーに選ばれている山刀伐。そのことから八一はいずれ対戦することになる『名人』を意識してオールラウンダーを目指す。
付け焼刃ではあるが『振り飛車』を学んだ八一……だが! というのがお楽しみどころのひとつだろう。
『りゅうおうのおしごと!3』は八一のカッコよさも出つつ、やはり桂香さんと飛鳥ちゃんの二人に感情移入せざるをえない素晴らしい物語だった。
さりげなく銀子のメインヒロイン感が強まってるのも切ないながら萌えポイント。
そして、辛い思いをするのはあいちゃんもだったりするけれど、それは避けられない厳しい『将棋星人』の世界なのだ。
だとしても、彼女たちが下す決断は実に、ゴキゲンだろ?
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補足:2018年1月8日よりTVアニメ放映