【感想】りゅうおうのおしごと！（著：白鳥士郎）

『りゅうおうのおしごと！』は、史上最年少で竜王の座を取った棋士『九頭竜八一』が連敗を喫している最中、押しかけてきた小学生『雛鶴あい』を弟子に取ることとなり、彼女の才能や姿勢を通じて将棋を見つめ直す物語である。

「おかえりなさいませ！　お師匠様っ！！」

　主人公のプロ棋士（十六歳）、八一（やいち）は最年少で竜王となったものの、調子が奮わずに連敗中。挙句、某匿名掲示板では『クズ竜』と叩かれる始末。そんなときに小学生のあいちゃんと出会い、改めて将棋という競技に触れていく。

　――のだが、実家の遠いあいちゃんが八一の家に居候すると言い出したので、さあ大変。いや、あいちゃんは旅館女将の娘さんで、家事を任せられるしっかり者さんだけど、その、社会的にね……。

　八一の姉弟子にして女流二冠、銀子（ぎんこ）さんも、基本ツンツン、ときどきデレ風味で、本当にいいヒロインしている。八一に素直な好意を表すあいちゃんの登場にあからさまにぴりぴりするのが、大人げなくて可愛い。

　他にも八一と銀子の師匠（開幕がぶっ飛びすぎててインパクト大）、その娘さん、あいちゃんの将棋友達、ご両親、中二病で熱いライバル、ちょいちょいと登場する棋士や会館職員さんなど、濃いキャラが集まりに集まって楽しい。

　押しかけ弟子のあいちゃんに対し、八一は初め、自分のこともままならない上、何かメリットがあるわけでもないのに弟子だなんて、と遠慮気味だった。

　相手を諦めさせようと対局したところ、すぐにあいちゃんの将棋の才能に触れることとなる。

　この子が将来、どんな将棋を指すようになるのか――八一は棋士としてあいちゃんに惹かれていく。棋士として。大切なことだから二回言った。

　弟子を取ったことで、八一自身にも変化が起きる。

『竜王』というプレッシャーから、無残な負け方はできないという考えに囚われていた八一は、どんな局面でも諦めずに手を模索するあいちゃんの姿勢に、かつて同じように憧れから将棋界に入門した自分を取り戻していくのだ。

　……私、こういうストーリーにめっちゃ弱いのねん。

　それから、周りで観戦している人の声が入ってくるのも、競技モノならではと思う。自分がその場の観客に紛れ込んでいるかのような気にさせてくれるのが、このジャンルのイイところ。

『りゅうおうのおしごと！』は、ライトノベルらしく、実在する戦法をある種の『異能バトル』風に盛り上げている。盤面を想像しながら読むのは通じていないと難しいが、最低限のルールしか知らない私でも楽しく読める辺り、親切設計である。

　２０１７年、現実に登場した中学生棋士とも絡めて『現実が空想を超えていくかもしれない』と語りたいのだが、先に書いたとおり、私は将棋に疎いので何も言えず。……だらぶち。

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補足：2018年1月8日よりTVアニメ放映

らのつづり。