【感想】<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 3.超級激突(著:海道左近 絵:タイキ)
二国が誇る超級同士の決闘! 大喝采のアリーナイベント!
- 作者: 海道左近
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2017/04/01
- メディア: Kindle版
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あらすじ
『インフィニット・デンドログラム 3.超級激突』は、決闘都市ギデオンで開かれる『超級激突』のイベントで、レイたちが超級マスターのフィガロと迅羽の戦いを観戦する物語である。
「死に掛けの国と侮っていたガ、来た甲斐があっタ! 仮に対戦相手のフィガロが駄目でも、お前とやれたらそれは楽しイ!」
一般人には目で追うことも困難な超音速超人バトル!
都市ギデオンにて滞在中のレイ一行。
記者マリーの手配によって、アリーナイベント『超級激突』のチケットを手に入れたレイたちは、この世界のてっぺんに君臨する超級職同士の戦いを目の当たりにすることになります。
そこで再会したのは、アルター王国に所属する超級、鎖使いのフィガロと、レイの兄、クマの着ぐるみがぷりちーなシュウ。
イベントではフィガロが出場するということで、その友人のシュウは応援に来たとのことです。何やらきな臭い動きも察知している様子で……?
フィガロの対戦相手は、黄河帝国が誇る超級、『応龍』と呼ばれしマスターキョンシー・迅羽。これがまたイラストと相まってめっちゃカッコいいキャラ!!
手足の大きな爪で使う技も含め、一発で好きになりました。
そんな二人の戦いを、シュウ・マリーの解説つきで見守るレイとルークとエンブリオたち。
今回の主人公一行は、まさにヤ〇チャ視点の一般人! 本人たちの下地はともかく、ゲーム的にはまだまだデンドロ歴の浅いマスターだということですね。
今巻は二人の視点から語られる外伝が収録!
アリーナイベントは大体、半分くらいのボリュームです。
残りの半分は、女衒(!?)のルークと記者のマリーさんから語られる、レイがゴゥズメイズ山賊団と戦っている間の外伝が収録されております。
モンスターテイマーであるルークは、水上を移動できるモンスターを探しに、テイム屋さんを尋ねます。
能力は申し分ないものの、いまいちぴんと来ないモンスターたち。機会を改めようとしたルークは、店の片隅に置かれた甕から飛び出してきたミスリル・アームズ・スライムと出会います。
本編でもたびたび散見される少年らしからぬハイスペックが、テイム不可能と言われたスライムとの対話にいかんなく発揮されるエピソードとなっております。
一方、記者のマリーはイベントチケットを入手した後、不思議な女の子と路地裏で出会います。
女の子はなんと、自ら『王女』と名乗ります。
これは下手すると重要人物誘拐の疑いで監獄にぶち込まれかねない状況。
しかし、マリーは王女様の自由に付き合ってあげる中で、『マリーというキャラクターのロールプレイ』に没入していくこと、この世界で思い感じることの大切さを独白してくれます。
しかも薄々、ただ者ではない感を滲みだしていた彼女はなんと、あの人物で……!!?
ということで、外伝でありながら、それ自体が読み応えのあるストーリーでした。元から魅力的なサブキャラクター陣ですが、やはりそれぞれのバックグラウンドが分かってくると、不特定多数が参加しているMMO感を満喫できますよね!
まとめ
『インフィニット・デンドログラム 3.超級激突』は、超人同士の読み合いと隠した力が炸裂するハイスピード能力バトル、そしてサブキャラクターたちの魅力が膨らむ外伝の物語でした。
レイとネメシスコンビもザ・主人公で好きなのですが、リリアーナさんや、今回初登場の迅羽、驚きの新事実なマリーさんなど、私の好みに刺さるキャラクターがいっぱいですな~!
本編の気になる引きは次巻に続く! ということで、大波乱の予感です。超人ばかりが集まった都市でレイとネメシスがどんな活躍をするのか、とても楽しみです。
【感想】<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 2.不死の獣たち(著:海道左近 絵:タイキ)
生命ある者だからこそ持つおぞましい怨念、アンデッドとの死闘!
- 作者: 海道左近
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2016/12/29
- メディア: Kindle版
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あらすじ
『インフィニット・デンドログラム 2.不死の獣たち』は、都市ギデオンに到着したレイとネメシスが、誘拐されたティアンの子供を救うため、凶悪極まるゴゥズメイズ山賊団に挑む物語である。
「レイ、私は今、一人の人間として、女性という花を守る棘としてこのクエストに挑んでいる」
俺の質問を遮るように、ユーゴーは発言する。
「君はなぜこのクエストをしている。王国の【聖騎士】だからやっているのか? それとも、君という男だからか?」
新たな装備と奇妙な出会い。挑むは子供浚いの山賊団
開幕、「あれ? 読む作品間違えたかな?」と思うような凄惨な描写が繰り広げられてびっくりします。ええ、洒落になっていません。
さて、前巻の物資護衛後、決闘都市ギデオンに到着したレイたち一行。
その商店に置いてあった遺産、カプセルトイちっくなガチャから、謎の機械馬・ゼフィロスシルバーをゲット。喜び勇んで乗馬するレイですが……あれ、乗馬スキル持っていない!?
騎士という下級職をすっ飛ばした弊害がここで出たレイは、がっかりして街に帰ります。
すると、何やら路地裏で、男たちに囲まれている女性が……。
この世界のNPCはティアンと呼ばれています。
そのティアンである女性は、弟を山賊団に誘拐され、身代金の要求を受けたとか。なんとかお金を集めて渡そうとしたところ、その山賊団の下っ端たちに騙され襲われそうになっていたのです。けしからん!
助けに入ろうとするレイより早く、ちょうど居合わせたマスター・ユーゴー・レセップスが下っ端たちを止めに入りますが、呆気なく返り討ちに!?
ユーゴーの職は『高位操縦士』と機械乗りで、生身の戦闘は強くないそうです。
そんな彼とその仲間・キューコ(無表情毒舌が素敵)とともに、無償で子供たちの救出に向かうことにしたレイ。
その道中、ネメシスをメイデンと見抜いたユーゴーは、レイにこう言うのです。
メイデン型のエンブリオを持つマスターの共通点は、このゲームをゲームの世界だと思っていない、と。
激闘! 凶悪なネクロマンサーと凶暴なグラディエーター!
対する山賊団の頭領は、ネクロマンサーのメイズとグラディエーターのゴゥズ。二人合わせてゴゥズメイズ山賊団というわけです。
二人ともマスターではなくティアンで、この世界ではぶっちぎりの戦闘力を持つ超級職を狙っている模様。
二人を倒せるマスター(つまり、まさにグラディエーターの超級職を持っているフィガロさんとか)が放置しているせいで、お手上げ状態に。
そんな彼らにとって、戦闘は命がけの行為。ゲームじゃありません。
一方で、レイたち自身はマスターだから死んでもデスペナルティを受けるだけとはいえ、子供たちのためにも絶対に負けられません。
かくして両者激突。
メイズとゴゥズは、恐るべき執念でもって、レイたちを迎え撃とうとします。
謎だらけの世界! それを管理する『運営』とは?
1巻からぷんぷん匂わせている〈Infinite Dendrogram〉の異世界感。
さすがに、このゲームの世界は本当の異世界で、プレイヤーたちは独自ハードを用いて送り込まれている存在だ、と察しがつきます。
そんな世界で『運営』をしているAIたち。
ゲーム開発者を称する人物の名前がルイス・キャロルなのでもろにアレです。『不思議の国のアリス』からAIたちの名前が取られています。
AIたちはそれぞれの思惑(あるいは役割?)で運営に携わっている様子で、レイに助言を与えてくれたチェシャや、モンスターを作っているジャバウォックやクイーンなる者たちが、この世界をVRMMO風に仕立てています。
果たして、彼らの目的とは? そんなところも大いに気になってくる2巻でした。
まとめ
『インフィニット・デンドログラム 2.不死の獣たち』は、不死者たちの血で血を洗う激闘が繰り広げられる物語でした。
レイの心が強い理由、人間状態でがんばるネメシスにときめきながらも、私的には事件の初めと終わりを締めてくれるリリアーナさんの登場が嬉しいです。
そのうちリリアーナさん、厄介なクエストばかり持ってくるNPCとして認知されそう……そのくらい色んなことを背負わされてる苦労人なお方ですね!
【感想】<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 1.可能性の始まり(著:海道左近 絵:タイキ)
『生命』溢れるVRMMOゲーム。美少女パートナーと共に行く逆転劇!
- 作者: 海道左近
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2016/11/01
- メディア: Kindle版
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あらすじ
『インフィニット・デンドログラム 1.可能性の始まり』は、受験を終え一人暮らしを始めた青年・レイこと椋鳥玲二が、オーバーテクノロジーなVRMMORPG『Infinite Dendrogram』をプレイスタートし、美少女型AI・ネメシスとともにステップアップしていく物語である。
「お前、俺の……」
〈エンブリオ〉なのか……?
「無論。さて、マスター? あの糞ムカデはまだ健在だ。誕生祝いの景気づけ。派手にトドメを刺すとしようか」
脳波に紐づけされた『相棒』は武器に変身できる美少女!?
ゲーム好きの学生・レイこと椋鳥玲二は、受験を無事終え、サービス開始から半年遅れでVRMMORPG『Infinite Dendrogram』に参加します。
このゲームのシステムは、幅広いクラスやスキルを組み合わせてのプレイヤー育成と、脳波に紐づけされた相棒『エンブリオ』の存在です。
エンブリオは普通のゲームのように選択するものではなく、プレイヤーの個性や特性から生み出されるもので、武器型や防具型、護衛者型、乗り物型、果てには建物型や結界型なるものがゲームに存在しているようです。
(あまり的確なたとえではありませんが、能力バトルモノの異能力、いわゆるスタンド能力のような位置づけですね)
プレイ開始時にはまだ覚醒していないエンブリオ。
先行プレイをしている兄・シュウの待ち合わせに向かおうとする道中、NPCの女性騎士とばったりぶつかってしまいます。
まるで生きた人間のような反応を示す彼女、なんでも妹を探しているとか。
改めて兄(クマの着ぐるみ!)と合流したレイは、女性騎士と妹のこと、ウィンドウに現れた『クエスト』のことを話します。
すると、兄は、彼女の妹がモンスターのうろつくエリアに出かけてしまったこと。それから、こんなことを言うのです。
これは恐らく時間が経つと失敗するタイプのクエストだ、と。
そして、プレイヤーと違い、死亡したNPCは二度と蘇らない、と。
妹を助けに行くレイとシュウ。
そこで兄とも女性騎士とも引き離され、窮地に陥ったレベル0のレイ(零だけに、なんつって)。妹さんの命が危うい!
そんな状況下で、ついにレイのエンブリオが覚醒。
現れたのは、ネメシスと名乗る武器に変身できる美少女でした。
目指せランカー! 情勢不安定な二国間で巡らされる謀略!?
何やかんやあり、『聖騎士』の上級職に就けたレイ。ネメシスという珍しい美少女型エンブリオとともに、幸先のいいスタートを切った……と思った矢先。
この世界には五つの国が存在し、レイが所属する騎士の国『アルター王国』は、機械の国『ドライフ皇国』から侵攻されています。
そんな敵国から放たれたと思われるプレイヤーキラーに、レイはあえなく敗北。一日もの間ログインできない(ゲーム世界では三日が経過している)デスペナルティを受け、己の力量不足を痛感。ネメシスと強くなることを誓い合います。
そんな熱く爽やかなレイは、仲間と出会い、クエストに挑戦することに――
一方で各国のトッププレイヤーたちは激しい戦いを繰り広げているのですが、ここにレイが参加できるのは、まだまだ先の話になるのでしょう。
可愛い相棒と二面性のあるトップランカー、そして生命的NPC『ティアン』の魅力
美少女エンブリオのネメシスは大食い勝気で、ホラー苦手な可愛いキャラ!
そんな彼女が変身する武器は、いくつかの段階に進化できるとのこと。謎めいたシステムとプレイヤーを表すスキルが、二人をどんな境地へ連れていくのか……次巻がとても楽しみな一巻でした。
ヒロインが魅力的なのはもちろんのこと、周囲の登場人物もなかなか素敵です。
間違えて現実の顔のままキャラクリをしてしまったせいで、常時クマの着ぐるみを装備している兄のシュウ。ってか、この人、多分アレでしょう!?
素は温厚そうなのに戦闘になると恐怖ムーブを見せてくれる鎖使いのフィガロさん。トップランカーってみんなこんな感じなのでしょうか……。
男の子なのに可愛くてドキドキしちゃうルークと、健全淫魔なバビ。微笑ましい。
出番少なめですけど設定がもうおいしい女性騎士ティアン(この世界ではNPCをそう呼ぶ)のリリアーナと妹のミリアーヌ。
いつの間にかしれっとそばにいる記者のマリーさん。
敵国側で小悪党っぽいチャットをする二人のプレイヤーと、感じがもう美少女間違いなしな『獣王』。
一巻からかなりプレイヤー設定を広げているので、まだ直接現れていないプレイヤーも含め、彼らの活躍にドキドキ期待です。
まとめ
『インフィニット・デンドログラム 1.可能性の始まり』は、熱血な青年と少しへっぽこな美少女が無限に広がる可能性へと一歩を踏み出す物語でした!
すでに展開されている布石が物語のどこで繋がりを見せていくのか……わくわく感を味わえるVRMMOモノです。
読んでいると、私もこんな美少女疑似人格がパートナーになってくれるMMORPGが遊びたくなってきます……(欲望)
【感想】メロディ・リリック・アイドル・マジック(著:石川博品 絵:POO)
チョコレートのように甘くほろ苦い、アイドル青春爆発キラーチューン!
メロディ・リリック・アイドル・マジック (ダッシュエックス文庫DIGITAL)
- 作者: 石川博品,POO
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/08/25
- メディア: Kindle版
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あらすじ
『メロディ・リリック・アイドル・マジック』は、音楽と幻視に苦しめられている高校新入生・吉貞摩真(よしさだなずま)が、女子高生アイドル激戦区で、罪悪感に苦しめられている同級生・尾張下火(おわりあこ)に出会う物語である。
下火が歌うたび、新しい幻が次々に生まれていく。やがて世界を埋めつくすのは明らかだった。まばゆい光に包まれていままでの世界が見えなくなっても、ナズマには惜しくなかった。うつくしい光は、うつくしいというだけで正しかった。
心に傷を負った少年少女の出会いから始まるアイドル活動
沖津区は女子高生アイドル活動が活発な街。ただし国民的アイドルのファンと名乗ろうものなら、市中引き回し不可避な殺伐シティでもある……!
とまあ、そんなこんなで活気のある街と知らず寮生活を始める高校一年生の男の子、吉貞摩真(以下、ナズマ)。
ナズマは、幼馴染の津守国速(つもりくにはや)と学生寮で再会し、ほっと一安心。国速は自分がアイドルにはまっていることを明かし、そのライブ映像を見せます。
盛り上がる国速。一方で、凍りつくナズマ。
ナズマは生まれつき、音楽を聴くと幻視が生じる共感覚に悩まされていたのです。
壊滅的な中学生活を終えて、高校生活に希望をかけていたナズマは、どこまでも音楽から逃げられないことに落胆してしまいます。
一方、ナズマが寮で出会った女の子、尾張下火(あこ)は、アイドルに対する深い罪悪感を抱いています。
入学式から一週間後、半ば流れで友人という関係になったらしい飽浦ダングリアーシャ明奈(以下、アーシャ)の誘いでライブハウスに行く下火。
その熱を受け、自分と一緒にアイドルをやってほしいというアーシャの懇願に押し切られ、活動を始める羽目になってしまいます。
アイドル活動にはプロデューサーが必要。
下火とアーシャは、先輩グループで音楽作りを担当している国速の協力を得ようと、ナズマに相談します。
それを聞いたナズマは――
マネージャーになれば、裏方で音楽を聴かずに済む。
そんな後ろ向きの思いから、二人のアイドル活動に関わることを決めるのです。
パワフルでナイーブなキャラクターのライブ感!
ナズマと下火、二人の視点から紡がれる物語。
それを彩るのは、国速やアーシャ、先輩アイドルたちといった、強烈なキャラクターたちです。
アイドルグループも『血祭り』だったり『DIE!DIE!ORANGE!』だったりとやたらパンキッシュな名前。
一見、癖のありまくりなキャラクターたちですが、反面、心に傷を負っていたり乙女だったりと、繊細な魅力もありまくりです。
ナズマにときめいているのに錯覚で済ませてしまう下火、ナズマになんだかんだで気があるっぽいアーシャ、天然人たらしなナズマの水面下三角関係も、にやにやしちゃいました!
当然、物語はアイドルの輝かしい活躍だけにスポットライトを当てたものではありません。
舞台袖には、個々人の過去や禍根が横たわっているのです。
めくるめく言葉の応酬がとても特徴的で魅力的!
比喩表現で描かれるキャラクターの心情も好きですが――
高速キャッチボールのごとくなやり取りが特に印象に残りました。
アーシャの名前弄られの返し、国速の切れ味抜群なトーク、下火の内心で乱射されるネットスラング、先輩アイドル百合香の傍若無人っぷり、すごく詳細な国民的アイドルの解説をしてくれる友人の河野。
パロディも多いハイテンションな会話は、かなり特徴的だと思います。
まとめ
『メロディ・リリック・アイドル・マジック』は、アイドルとして輝く女の子たちとそれを支える男の子たちが、あっという間に駆け抜けていくような青春物語でした。
あえて言えば、ナズマの幻視要素は特徴づけに過ぎず、ラブコメ要素もそれほど強くはありません。
でも、「好きすぎて続きが読みたい!」という気持ちからくるもので、この物語はこれで綺麗に終わっていることは保証いたします。
強烈なキャラクター陣に埋もれない、ダウナーな下火ちゃんがフェイバリットな作品でした!