らのつづり。

ライトノベルを中心に、読んだ本の感想など。

【感想】メロディ・リリック・アイドル・マジック(著:石川博品 絵:POO)

チョコレートのように甘くほろ苦い、アイドル青春爆発キラーチューン!

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あらすじ

メロディ・リリック・アイドル・マジック』は、音楽と幻視に苦しめられている高校新入生・吉貞摩真(よしさだなずま)が、女子高生アイドル激戦区で、罪悪感に苦しめられている同級生・尾張下火(おわりあこ)に出会う物語である。

 

 下火が歌うたび、新しい幻が次々に生まれていく。やがて世界を埋めつくすのは明らかだった。まばゆい光に包まれていままでの世界が見えなくなっても、ナズマには惜しくなかった。うつくしい光は、うつくしいというだけで正しかった。

 

心に傷を負った少年少女の出会いから始まるアイドル活動

 沖津区は女子高生アイドル活動が活発な街。ただし国民的アイドルのファンと名乗ろうものなら、市中引き回し不可避な殺伐シティでもある……!

 とまあ、そんなこんなで活気のある街と知らず寮生活を始める高校一年生の男の子、吉貞摩真(以下、ナズマ)。

 ナズマは、幼馴染の津守国速(つもりくにはや)と学生寮で再会し、ほっと一安心。国速は自分がアイドルにはまっていることを明かし、そのライブ映像を見せます。

 盛り上がる国速。一方で、凍りつくナズマ。

 ナズマは生まれつき、音楽を聴くと幻視が生じる共感覚に悩まされていたのです。

 壊滅的な中学生活を終えて、高校生活に希望をかけていたナズマは、どこまでも音楽から逃げられないことに落胆してしまいます。

 

 一方、ナズマが寮で出会った女の子、尾張下火(あこ)は、アイドルに対する深い罪悪感を抱いています。

 入学式から一週間後、半ば流れで友人という関係になったらしい飽浦ダングリアーシャ明奈(以下、アーシャ)の誘いでライブハウスに行く下火。

 その熱を受け、自分と一緒にアイドルをやってほしいというアーシャの懇願に押し切られ、活動を始める羽目になってしまいます。

 アイドル活動にはプロデューサーが必要。

 下火とアーシャは、先輩グループで音楽作りを担当している国速の協力を得ようと、ナズマに相談します。

 それを聞いたナズマは――

 

 マネージャーになれば、裏方で音楽を聴かずに済む

 そんな後ろ向きの思いから、二人のアイドル活動に関わることを決めるのです。

 

パワフルでナイーブなキャラクターのライブ感!

 ナズマと下火、二人の視点から紡がれる物語。

 それを彩るのは、国速やアーシャ、先輩アイドルたちといった、強烈なキャラクターたちです。

 アイドルグループも『血祭り』だったり『DIE!DIE!ORANGE!』だったりとやたらパンキッシュな名前。

 一見、癖のありまくりなキャラクターたちですが、反面、心に傷を負っていたり乙女だったりと、繊細な魅力もありまくりです。

 

 ナズマにときめいているのに錯覚で済ませてしまう下火、ナズマになんだかんだで気があるっぽいアーシャ、天然人たらしなナズマの水面下三角関係も、にやにやしちゃいました!

 

 当然、物語はアイドルの輝かしい活躍だけにスポットライトを当てたものではありません。

 舞台袖には、個々人の過去や禍根が横たわっているのです。

 

めくるめく言葉の応酬がとても特徴的で魅力的!

 比喩表現で描かれるキャラクターの心情も好きですが――

 高速キャッチボールのごとくなやり取りが特に印象に残りました。

 アーシャの名前弄られの返し、国速の切れ味抜群なトーク、下火の内心で乱射されるネットスラング、先輩アイドル百合香の傍若無人っぷり、すごく詳細な国民的アイドルの解説をしてくれる友人の河野。

 パロディも多いハイテンションな会話は、かなり特徴的だと思います。

 

まとめ

メロディ・リリック・アイドル・マジック』は、アイドルとして輝く女の子たちとそれを支える男の子たちが、あっという間に駆け抜けていくような青春物語でした。

 あえて言えば、ナズマの幻視要素は特徴づけに過ぎず、ラブコメ要素もそれほど強くはありません。

 でも、「好きすぎて続きが読みたい!」という気持ちからくるもので、この物語はこれで綺麗に終わっていることは保証いたします。

 強烈なキャラクター陣に埋もれない、ダウナーな下火ちゃんがフェイバリットな作品でした!