らのつづり。

ライトノベルを中心に、読んだ本の感想など。

【感想】All You Need Is Kill(著:桜坂洋)

死ぬたびに繰り返される一日、侵略者との戦いの果てに待ち受けるのは

ざっくりあらすじ

All You Need Is Kill』は、地球外生命体から侵略を受けている未来が舞台。時のループ現象に巻き込まれた新兵の『キリヤ』が、同じ戦場にいた一騎当千の女兵士『リタ』の戦闘技術を学習し、戦場からの生還を目指す物語である。

「どうせ使うのはおまえさんに死体袋が支給されたときだ。悪用のしようがねえ。二度も三度も死ぬってんなら別だがな」

 

 

感想1.ただの新兵が鬼神のごとき猛者へと変貌する過程

 冒頭で主人公のキリヤ・ケイジは戦死する。

 ふと目覚めると、そこは兵舎のベッドの上。初めは夢を見たのだと思い込むキリヤ。多少の変化はあれどもほぼ同じ一日を過ごした彼は、迎える戦場で一番に死ぬ仲間を救おうと身構える。

 しかし、キリヤは仲間を救えなかった。敵の弾が自分目がけて飛んできたからだった。

 ふと目覚めると、そこは兵舎のベッドだった――

時のループ』現象を体験していることに気づいたキリヤは、ならば自分が死ぬことなく生還して明日を迎えようと、戦闘技術を学ぶことを決意する。

 

 やがて、キリヤはずば抜けた力を持つ兵士と化す。が、周りの人間からすればキリヤが豹変したようなもので、徐々に不気味がられることになってしまう。

 大量の敵を屠り、味方を蹴飛ばし(救おうとしている)、戦場で踊るように活躍するキリヤは、徐々にもう一人の主要人物、リタ・ヴラタスキと同化していくのだ。

感想2.何度繰り返しても存在する救えない命

 キリヤがループして最適解を探し出したところで、救えない命もある。

 おしゃべりな先輩、訓練をつけてくれる軍曹、食堂のお姉さん、メカニック、ジャーナリスト、民間人。

 人物像がしっかり描写されるため、たとえリセットされる一日で出た死者であっても、なんとも言えない気持ちにさせられる。

 ましてや、結末では――これはループモノ独特のお楽しみだ。

感想3.問答無用に襲いかかってくる侵略者

 敵である侵略者はギタイと呼ばれている。

 外見上はカエルの溺死体に似ているとされており、背景として語られるところによれば、環境を作り変えるためのナノマシンから産み落とされた兵器なのだという。

 キリヤがループに入り込んでしまった原因もギタイにある。生き残るのはどちらか、果てしない死闘が繰り返される一日の中で展開される。

 

All You Need Is Kill』は、一巻完結だからこそ、ボーイミーツガールが多い物語の中では驚きの結末が待っている小説だ。キリヤ・レイジの壮絶な一日をぜひ読まれたし。できればコーヒーと一緒に。もしくはジャパンのレストランのグリーン・ティー

 

補足:この小説を原作としたトム・クルーズ主演映画が2014年に公開されている。