【感想】ストライクフォール2(著:長谷敏司)
少年と競技が迎える転換期、技術が導く未来やいかに
1巻感想はこちらから
ざっくりあらすじ
『ストライクフォール2』は、双子の弟の代わりに出場した試合で歴史をも変える技術『慣性制御』を実現してしまった鷹森雄星が、大人の事情に振り回されつつ、チーム二軍から這い上がっていく物語である。
「動き出しだ。宇宙で、動き出しが一秒遅れれば、一キロ以上の距離のロスをする。動き出しが遅いから、大事なときに追いつかない。だから、チームの誰よりもすっトロいんだよ」
感想1.ぶっつけ本番の輝かしい勝利、その影
2巻は1巻ラスト直後から繋がるストーリーだ。前作、英俊(ひでとし)のフリをして試合に出場した雄星(ゆうせい)は、その行動の結果を受け止めることになる。
入れ替わり出場は競技において重罪であり、雄星、そして英俊が所属していたチーム『シルバーハンズ』は罰を受けてしまう。
それだけでなく、雄星がストライクシェル『コンダクター』から生み出した慣性制御ユニットは人類史を一変させるほどの技術と目される。
雄星、関係者、ならびに幼馴染の環(たまき)や家族が狙われるかもしれない、という事態に陥ってしまうのだった。
競技に留まらない物語の広がりを予感させてくれる導入である。
感想2.どん底からの這い上がりストーリー
雄星は環の父親の尽力によって、シルバーハンズの二軍として身柄を預けられる。弟の死がありながらも夢のプロチーム入りに浮足立つ雄星。
だが、雄星に待っているのはチームメイトからの罵倒だ。雄星のせいで一軍は試合を没収され、ランキング上位に食い込むのも絶望的。にもかかわらず、雄星は特別扱い。チームメイトが不満を抱くのも当然だろう。
そこでめげないのが雄星のアツいところ。実力で彼らを黙らせようと意気込む。
……まあ、相手はプロ二軍なので、当然のようにあしらわれるんですけどね。
雄星は監督直々の訓練で、自分に何が足りないのか、そして自分がすでに何を持っているのかを知っていく。その過程が競技モノにお約束かつ魅力的なポイントだ。
感想3.競技の進化が描かれる試合描写
方向転換するのに弧を描くような軌道を取る――というのが、『ストライクフォール』1巻で描かれていたストライクシェル戦闘の描写だった。
この巻では、方向転換するのに『最短』の『直線』を移動する慣性制御がメイン装備となる。それを連続して使用するのにも、パイロットの適性が関係してくる。
ストライクフォールはチームで行う競技だ。一人がぶっちぎり機動をしたとしても、試合に勝てるわけではない。他の機体を置き去りにしてしまう。
そこで、雄星は慣性制御を活用した戦術に足りない知恵を巡らせることとなる。
経験を積んだ雄星が本格的に動き出す試合は、興奮度マックスだった。陰険なチームメイト、カール・リンネの存在も大きいけど。
感想4.ニューヒロインの登場!
幼馴染の環、英俊のチームメイトで雄星の師匠となったアデーレ。この二人もなかなか魅力的なヒロインだったが、今回登場するレイカ・フランクリンがこれまた可愛い!
アデーレに頼まれて、二軍での雄星の面倒を見るレイカ。最初はいやいやだけど、『なんでも全力で』がモットーで面倒見も『全力で』取り組もうとする、真面目でいい子なのだ。
木星出身の彼女には影もあって……というのが今作の読みどころだと思う。
というか、どうも登場人物全員がヒロインなのでは、と思ったり。
戦闘も恋愛もますます激化する『ストライクフォール2』。雄星が、そして競技そのものがどうなっていくのかとても気になる展開だ。
というか雄星さん、ほとんど環と両想いな気がするんだけど、本人の目の前でアデーレとも仲睦まじく……って、命が惜しくないんですか。