【感想】ストライクフォール(著:長谷敏司)
ロボット競技、兄弟とヒロインたち、慣性に抗う青春と激闘
ざっくりあらすじ
『ストライクフォール』は、異邦人『宇宙の王』にもたらされたテクノロジー、『チル・ウエポン』によって宇宙進出を果たした未来。ロボット競技のプロ選手を目指すも地球で燻っている『鷹森雄星』が、プロ一軍入りを果たした双子の弟『鷹森英俊』を超えようと奮闘する物語である。
〈ストライクフォールは、もともとチル・ウエポンを使う軍事訓練だよ。いまでも、ルールがあるだけの戦争だし〉
感想1.機体の制御や空間支配の困難さが描かれた未来の競技
この世界で利用されている『チル・ウエポン』は、宇宙から採取される粘土状の物体であり、あるコードに従って加工すると、さまざまな装置になる。
宇宙で人気の『ストライクフォール』は、『チル・ウエポン』から造られた人型ロボット『ストライクシェル』を用いてチーム戦闘を行う競技だ。
使用される武器はレーザーや荷電粒子砲など。どれも戦争で使われる兵器である。
プレイヤーを命の危険から守るのは、セーフティバブルという機能。保護槽が六十秒間だけあらゆるダメージを防いでくれる。
地上でも宇宙でも、ストライクシェルはカタパルトから高速で撃ち出される。自分も相手もそれぞれの『速度』を利用した戦いが繰り広げられるのが、作中のロボット戦闘の魅力だ。
感想2.キャラクターたちの揺れ動く関係
双子の兄弟と幼馴染の恋模様が対立の一因となっているが、ヒロインとしては幼馴染の環(たまき)より、英俊(ひでとし)のチームメイトであるアデーレのほうが濃い。
アデーレは雄星(ゆうせい)と同じ『キラー』という最前衛ポジションで戦っているので、未熟な雄星の師匠的な立ち位置となる。
メインとしては、弟にコンプレックスを抱く兄と、地上で燻る兄に苛立つ弟の物語だと言っていいと思う。地上での再会から終盤に向けての怒涛の展開は目まぐるしい。
感想3.キャラクターたちの背景に潜む不穏な気配
キャラクターたちは頻繁にストライクフォールを「戦争だ」と言う。チームの多くには軍人が参加し、チル・ウエポンの開発を推進しているからだ。
そしてストライクフォールという競技そのものに、なんらかの妨害工作が起きているという。
競技モノというだけでなく、『宇宙の王』やチル・ウエポンを巡る陰謀香る、宇宙が舞台の物語なのだ。
『ストライクフォール』はラノベとSFの両方で活躍されている作者によって描かれた世界だ。高速で繰り広げられる試合展開と試行錯誤の描写に、引き込まれること間違いなしだ。そしてアデーレさんは蛮族かわいい。
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